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絞死刑
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絞死刑
監督:大島渚 1968年 日本
冒頭、こんなテロップが画面に表示される。
“皆さんは死刑廃止に反対ですか賛成ですか”
“皆さんは死刑場を見たことがありますか”
“死刑執行を見たことがありますか”
最初に日本にある死刑場と死刑執行の様子が事細かく説明され、一人の男(Rと呼ばれている)が絞首刑により死刑執行される。ところが、普通なら15分もすれば、死刑囚は息絶えるがRはいつまでたっても脈がある。法律によれば、心神喪失状態の人を死刑執行することはできない、となっている。ただ、殺せばいいのではなく、罪の意識を持った者を処刑することに意味があると考えられているからだ。心神喪失したRは直ちに救命の処置を受ける。
意識を取り戻したRは、「ここはどこですか?」と刑務官たちに質問をする。その言葉を聞いて慌てる刑務官たち。「君はR、人を二人殺して死刑になった朝鮮人のR!」と刑務官が言うと、「朝鮮人て何ですか?」とまたRが質問を返す。
本作は、日本の死刑制度に異議を唱えつつ、さらに在日朝鮮人に対する差別に対しても踏み込んだ話になっている。記憶をなくし、自分が朝鮮人だということもわかっていない者を、果たして差別することはできるのか。また、差別されたとしても本人に朝鮮人としての自覚がなければ、本人は何も感じないのか。全くの記憶がない人を死刑にすることはできないし、また、記憶がないのなら、朝鮮人や日本人なんて関係なくなるのではないか、と私は思った。
困った刑務官たちは、Rに記憶を取り戻してもらうため、Rの家庭のことや、事件にまつわる寸劇を自分たちで行い、Rに見せる。この寸劇が喜劇のように進んでいくので、重苦しい雰囲気なのだが、コメディのように感じられる。
後半からは妄想と現実とが入り混じり、みんなで想像の世界に入りながら、事件のことについて考えていくのだが、このあたりから、Rがだんだんと記憶を取り戻していく。自分は貧しい在日朝鮮人の家庭出身で、金もなく、自分の想像の世界で楽しむしかなかった。それがいつからか、想像と現実との区別がつかなくなり、人を殺したことが想像なのか、現実なのかはっきりわからない、とRは言う。
さらにRは、「人を殺したら犯罪になる。だとしたら、国家が人を殺したら場合それは罪にならないのか。」と検事に問う。「私は自分を無罪だと感じる。」と言うR。
検事は言う「君は無罪だ。しかし、国家はそれを許すことはできない。だから君を無実にすることはできない。」と。Rは、すべてのRのために罪を受け入れると言って、踏み台の上に立つ、縄をかけられ落ちるR。しかし、その縄の先にはRはいない。
この話は実際に1958年に起きた小松川女子高生殺人事件をもとにして作られている。未成年にも関わらず、少年法の適用外として死刑が宣告されたが、差別も多分にあったと思う。
大島渚監督による、日本への、それから、常識とされるものへの批判がなされた作品である。大変見応えがありました。Rに記憶を取り戻させようと、無理やり劇をどんどん進めていって、思い出したら、お前は犯罪者だから死ねという制度に改めて疑問に感じずにはいられなかった。国家という後ろ盾のもとの殺人は罪にならないか、ってとても考えるところだと思った。悪いことしたから殺せ、というのが正しいことなのか。日本はそういうことで死刑制度を存置しているが、死刑制度を廃止している国のほうが多い中、今後の犯罪者の処遇についてももっと国家は考えていくべきじゃないかと思った。
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