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陽炎座
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陽炎座
監督:鈴木清順 1981年 日本
原作:泉鏡花
大正浪漫三部作である『ツィゴイネルワイゼン』、『陽炎座』、『夢二』の中の一つ。
1926年の東京。劇作家である松崎(松田優作)は謎の女性品子(大楠道代)と出会う。品子は松崎を贔屓にしてくれるパトロンの玉脇の妻であることがわかる。しかし、玉脇にはもう一人妻がいた。その妻の名前はイネという。イネは病気で亡くなった。しかし、イネが亡くなったあとに、松崎はイネと出会っていた……。
品子に金沢で待つという内容の手紙をもらい、金沢へと向かう松崎。途中でアナーキストの和田(原田芳雄)と出会う。不思議な祭囃子に導かれ、松崎が迷い込んだのは陽炎座という芝居小屋だった。
この作品は内容を説明するのがすごく難しい。とにかく、見終わって思ったことは、すごいもんを見てしまったな、ということである。清順ワールドに引き込まれ、夢と現実の区別があやふやになり、そこで独特の映像を次から次に見せられた。
特に印象に残ったシーン
① 和田についていったら、人形師の館みたいなところに連れていかれて、人形の裏を覗き込むシーン。人形の中にはアレがあった。
このシーン、早く人形の中を見せてくれ!って焦らされるんやけど、見られたときはおおっ、と嬉しくなった。
② 陽炎座が崩れるシーン
まるで花火を見ているように、ほうっと息を飲むように見惚れてしまうシーンだった。無音。全てが崩れていく様子を松崎といっしょに眺める。
③ 水の入った桶に沈んだ品子の口から鬼灯が一粒出てきて、そのあと大量の鬼灯がブワーッと水面に浮かんで品子の顔を覆うように埋め尽くすシーン
これはちょっと鳥肌が立つくらいにすごいシーンだった。何回も撮り直したんだろうなと思っていたら、後で見た大楠さんのインタビューで偶然そうなったと聞いて、まさに奇跡のシーンだったんだなと知った。
この『陽炎座』は『ツィゴイネルワイゼン』もそうでしたが、この独特の清順ワールドにどっぷり浸かって、その世界に連れていってもらえるところが最大の魅了であると私は感じています。松田優作演じる松崎と同じように、自分が生きているのか死んでいるのか、自分はどこへ向かっているのか、生と死や、夢と現実の輪郭がぼやける感覚を味わうことができます。原田芳雄さん演じる和田も、豪快で印象に残ります。こわいんだけど、その中を覗きたくなるような作品。タイトルの陽炎のごとく、目に見えるようで見えない、それでいてとても儚い命を表しているような、作品。大変素晴らしかったです。不思議な体験をしてみたい方は是非!すごく面白かった。『夢二』を早く見たい。
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