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裁かるゝジャンヌ



裁かるゝジャンヌ(LA PASSION DE JEANNE D'ARC)
監督:カール・テオドール・ドライエル 1928年 フランス



ゴダールの『女と男のいる舗道』の中で『裁かるゝジャンヌ』を映画館で見て涙を流すアンナ・カリーナの場面があってすごく印象的で気になっていたので見た。ジャンヌの涙が痛々しくて辛いが、命を引き換えにしても屈しなかったジャンヌに心を打たれた。

あらすじ
百年戦争でフランス軍を率いて英雄となったジャンヌ・ダルクがフランスからイギリスに買い取られ異端審問され、火あぶりの刑に処せられるまでの1日を描く。モノクロ、サイレント映画。ところどころに字幕の画面が挿入される。


以下、思ったことと箇条書きストーリー。

・異端審問官がことごとく嫌らしい。
・目線や態度が見ていて腹立つ。
・横柄な態度やヒソヒソ耳打ち話。
・威圧的な表情、口調
・問答で上手くいかなかったら国王からの手紙だと偽の手紙を見せて懐柔させようとする。
・顔の接写が多用されている。
・ジャンヌにどうにかして教会のことを悪く言わそうと必死。
・審問の時点で拷問みたい。
・どう見ても審問官のほうがサタンの手先(それが人間の本質を表しているのかもしれない)
・ジャンヌは涙を流しているのに、入ってくる審問官たちは下卑た笑いを浮かべていて胸くそ悪い。
・ジャンヌに冠をかぶせて、「神の娘だとよ」と言って見下して笑う。
・審問官の視線がいちいち突き刺さってくる。
・どう考えてもここにいる審問官のほうが悪魔。
・言うことを聞かなかったから拷問。
・悪魔にそそのかされたということにして改悛の誓約書に無理やりサインさせようとしたり、拷問しても死なせるな、高値で買い取ったんだからなと言う審問官。
・ジャンヌ「私を苦しめるために悪魔に遣わされたのはあなただ。」(その通りだと思う)
・審問官はその言葉を聞き、死刑執行が決まる。
・火刑台前にて押し付けがましい説教。
・改悛の誓約書にサインしないと火あぶりの刑に処す。
・半ば強制的にサインしてしまう。
・我に返り、自分は何てことをしてしまったんだと嘘の証言をしたと審問官に言うジャンヌ。
・命を惜しみ神に偽りましたと告白。
・火刑台へ
・見守る民衆は聖女を焼き殺した!と暴動を起こす。


悪いことしていないのに、悪いことをしたと認めさせ、認めないと処刑するってえげつないなと思った。言うことを聞かなかったから拷問にかけたり、いくらフランス軍を率いたとはいえ農民の娘にえげつないなと思った。そして、そういったことが正しいとされた時代があったなんて恐ろしいと思った。

しかし、この映画を見ていると、現代もそんなに変わってないのではないかと思った。権力を持つ者が他者を排除しながら、自分の思い通りに政策を進めていったり、戦争をしたり、今も変わらないやないかと思った。異端審問官のことを悪魔やなあと思ったけど、これが人間なんやんな...。嫌やけど。人間てほんまに愚かすぎやな。なんでこういう人たちの暴走を止められないのか。いつも権力に飼い殺されるのか。なぜ私たちはこんなにも無力なのか。

追記
監督のことについて、調べてみた。

"ドライヤー監督は、1889年2月3日、コペンハーゲンで生まれた。父はスウェーデン在住のデンマーク人、母はスェーデン人であった。父は裕福な地主で、母はその家の女中であった。ドライヤー監督は私生児として生まれ、養子に引き取られた。ドライヤーは18歳の時、生みの母であるヨセフィーナ・ニルソンの運命と自身の出生の秘密を探り当てた。ヨセフィーナの妊娠発覚後、父とその一族は彼女にスウェーデンを離れ、秘密裏にデンマークで出産することを強制した。ヨセフィーナはカールを出産した後にスウェーデンに戻ったが、別の男性との間に再び男児を身ごもった。相手の男性に結婚を拒否されると、彼女は硫黄を使った民間療法の中絶を試み、貧困と孤独の中、硫黄の過量摂取による中毒で死亡した。不幸にまみれた母の死を知ったドライヤーは、男性や権力者の欺瞞によって生まれる社会の抑圧と不寛容が母を死に追いつめたと悟った。母とドライヤー自身の運命を決定づけた「社会の抑圧と不寛容」というテーマは、その後の作品に色濃く反映され、繰り返し描かれることになった。また、ドライヤーは自身の出生について多くを語ることはなかった。”(wikiより)

ドライヤー監督の作品は、女性が主役の作品が多く、その中で、彼女たちが自分の意志や表現を抑圧しようとする社会秩序に対して果敢に闘いを挑もうとすることが特徴であるそうだ。それを聞くとこの『裁かるゝジャンヌ』でも理不尽に女性たちが魔女として権力に裁かれていたことに対する闘いを描く話である。
ドライヤー監督自身の中にそういった自分の母と自分を苦しめるようになった社会に対する怒り、疑問、批判が練りこまれているのだろうなと思った。そういった悔しさや、理不尽さを感じない人には、こういった作品は不要であるからである。監督の背景を知り、より、闘うジャンヌの姿が脳裏に刻々と刻まれた。決して屈せず、自分の意志を貫いたジャンヌのことをすごく尊敬しました。

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