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何がジェーンに起ったか?


何がジェーンに起ったか?(WHAT EVER HAPPENED TO BABY JANE?)
監督:ロバート・アルドリッチ 1962年 アメリカ

本物のホラー。

子役の頃は大人気で一世を風靡したベイビー・ジェーンは、大人になってから大根女優と言われ、事務所からも契約を切られたがるまでに落ちぶれていた。一方、ジェーンの姉のブランチは、成長し、大女優となり大金持ちになっていた。

ブランチ主催のパーティーの帰り道、ブランチの家のガレージに車を入れるところが画面に映される。ガレージの扉を開けようとする女性。その女性の後ろからアクセルをふかし車を発進させる女性。悲鳴が上がる。運転席にもう人はいない。割れるベイビー・ジェーン人形。そして、それに合わせるようにタイトルバック。ここすごくかっこいい。タイトル通り、“何がジェーンに起こったの?”と思わせます。

数年後、車椅子に乗るブランチと子ども時代の衣装と髪型のまますごい厚化粧をしたジェーンが現れます。二人は一緒に暮らしています。妹のジェーンは姉に来た手紙を捨てたり、姉の人気に嫉妬し、嫌がらせをします。ジェーンは、過去の栄光にしがみつき、酒浸りの日々。ブランチは事故で下半身不随になっており、2階の部屋から出られない生活をしていました。

ブランチが部屋から出られないのをいいことに、ジェーンはブランチに嫌がらせばかりします。子役気分になって、役に浸っているところへ、鏡を見て自分の老婆の姿を見て悲鳴を上げるジェーン。ここすごい怖い。というか、ジェーンが全体を通してすごく怖い。ブランチと同じ気持ちで、いつジェーンに殺されるんじゃないかと終始ハラハラさせられます。
ジェーン役のベティ・デイヴィスの狂気に満ちた怪演と、それに翻弄されるブランチ役のジョーン・クロフォードの競演がすごい。本業の女優のほうでも二人はライバルだったようで、そのバトルがこの演技にも溢れていて壮絶だった。

姉のブランチを執拗にいたぶるジェーンもホラーだが、自分の家でかつてのステージを思い出し、歌い出すジェーンもホラー。ジェーンの狂気っぷりのエスカレートがラストにつれてどんどん増していきます。そこが怖いのですが、目が離せないところです。

そんなジェーンがどんどん狂っていく様を観客の私たちはずっと追っていくんだけど、途中からだんだんジェーンのことがかわいそうに思えてきます。ジェーンはあんなにブランチに嫌がらせをしているにも関わらず、ブランチがいなければ生きていけなくて、ブランチのことを頼りにしているのです。まさに愛憎。
そして、ラスト振り回されに振り回されたブランチが瀕死の状態にまで追い込まれ、ついに真相をジェーンに話します。このシーンでは、なんて哀れな姉妹なんや、と哀れむ気持ちと、どこか安心した気持ちになりました。ジェーンの「わたしたち、ムダに憎み合っていたのね」というセリフが好きです。その後すぐに、アイス買ってくるわ!と走り出すジェーンのこと何だかかわいいと思ってしまった。結局姉のこと好きやったんやな、って。あんだけの仕打ちしておきながら、許されへんのやけど、ジェーンも苦しかったんやろうなって思った。
その後、かつての栄光を思い出しながら、海水浴客たちに囲まれて、アイスを持って踊るジェーンを見て、私は、もういがみ合うことなく、姉妹でゆっくりと今後の人生を過ごしてほしいなあと願ってしまいました。

怖いんやけど、でも、どこか愛おしい、そんな大好きな作品です。
最初はブランチ目線で見てるんやけど、最後はジェーンもかわいそうやったんやなあってジェーンの気持ちになるといたたまれない気持ちになります。本当に名作やと思います。

ほな

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