アデル、ブルーは熱い色



アデル、ブルーは熱い色 (La vie d'Adèle– Chapitres 1 et 2Blue Is the Warmest Colour
監督:アブデラティフ・ケシシュ 2013年 フランス


あらすじ
高校生のアデルは男女ともに好かれるかわいい女の子。その表情はどこか無防備で人を惹きつける。ある日、道ですれ違った青い髪で白い肌がとても美しいエマという女性に心を奪われる。夢にまで出てくる彼女とバーで再開し、交際が始まるが……。顔の接写が多く、高校生のアデルが働いて自立していくまでをじっくり描いた話。青い色がとても綺麗に効果的に使われている。
結論:アデルがビッチ。


 過激なセックスシーンが話題となった映画だが、実際見てみると、過激だとは思わなかった。うまいこと撮ってるなあ、とか女優二人の女優魂がすごいなあ、と思った。何百回とこのシーンを撮り直したそうで、そりゃ、これは監督とともに二人もパルムドール獲るわ、と納得の演技。納得のfake vagina。何回かある濡れ場では自分は最初の自慰シーンのほうが他よりもエロいと思った。
 アデル役のアデル・エグザルコプロスとエマ役のレア・セドゥがこの映画のインタビューですごく仲が良くて、何かすごいものを乗り越えた絆ができているのが見て取れてそれが、面白かったし、いいなあと思った。実際に、映画を終えて二人はたくさんのことを乗り越えてきたのだろう。*1

 この映画は恋愛映画と言えるのであろうか。確かに、アデルはエマに惹かれ、幸せな交際期間もあった。しかし、アデルには、どうもエマの気持ちを汲み取れていないというか、自分が今付き合っているのはレズビアンという生き方をしている人なんだという意識がほとんどなかったのではないかと思う。
 エマはレズビアンだが、アデルはレズビアンになったのではなく、心の寂しさを埋めてくれる誰かが欲しかっただけではないのかと思った。それも肉体関係で。誰でもいいというわけではないが、エマには性別を超えた魅力があり、それで好きになったんだと思う。しかし、エマとは生活水準も違い、友人関係でも自分とは合わない。そこで、アデルは職場の同僚と体の関係を持ってしまう。そして、それをエマに知られて二人は別れる。
 この二人が別れるシーンが私は一番セックスシーンよりも印象に残っているのだが、2、3回同僚と肉体関係を持ったというアデルに対して、エマがもう許せないとブチ切れするんですね。私のことバカにしてるの?と。グズグズに泣いて許しを請うアデルに対して、エマは、もう手遅れだから出て行ってと家を追い出してしまう。
 他の方のレビューを読んでいると、”この映画は同性愛の話だが、普通の恋愛も同じ”という感想をよく見かけたのだが、私はそうは思わなかった。一方が浮気をしたら、相手の信用をなくしてしまって別れる、というのは同性愛関係なく言えることだと思うのだが、この映画の場合アデルが浮気をしたのは、男性である。男性とそういう関係になれるということは、女性しか愛さないエマからすれば、アデルは同性愛ではなく、そちらのノーマルとされる恋愛を選んだほうが、アデル自身も幸せになれるのでは、と考えるのではないだろか。ましてや、アデルは子供好きで教師をしている。エマといっしょにいても自分たちの子供を持つことは男女でいるよりも難しい。そう考えるとあの場でエマがブチ切れる理由もわかるし、アデルは寂しかったとはいえ、あまりに軽はずみで浅はかな行動であったと思う。アデルにはそこまで浮気したいうことに深い意味はなさそうな印象を受けるシーンであったが、だからこそ、もう手遅れなのである。
 これが、もし二人とがストレートな話だったら、エマに同僚に車で送ってもらったときに、アデルが、「家に入ってもらったらよかったのに。」と言ったときに、アデルが、「いっしょに暮らしていることを周りに知られたくない。」ってエマに言うか?
 この映画はレズビアンのエマを好きになったアデルの話しである。”普通の”恋愛の話に置き換えはできない。”普通”と変わらないと思わせるぐらい、二人が自然で美しかっただけである。普通の映画として見たいのだけれど、今の社会がそうさせないのである。口では、皆普通の恋愛と変わらないと言うが、じゃあ実際自分がその立場になっても同じことが言えるのか。
 アデルは先ほどの発言でエマがどう思うかなど考えてないやろう。ただ、誰かに愛されたかっただけのような気がする。肉体的にも精神的にも。それではエマとはうまくいかないと思う。それだったら、他の男性に行けばいいのだから。そっちのほうがアデル自身も何も隠さなくてすむ。
 この映画を見て、アデル、エマともに二人が長く一緒にいたいという思いはお互いにあったのだろうかと思った。そういう思いがあるならお互いもっと一緒にいるために努力するだろうし、そういうものがこの映画ではあまり感じられなかった。何となくで一緒にいる、浮気したから別れる。それくらいの関係だったんやなと思った。だから、二人が好きで付き合っているというのと、一緒に生活していくというのはまた別物なのかなと思った。誰かと一緒に生活をしたい、もしくは関係を持続したいと思ったらそれなりの努力はお互いに必要だといつも思う。

 アデルは終始半開きの口が印象的でボサボサの髪の毛すらチャーミングで、エマはその涼しげな笑顔に誰もが惚れるであろう魅力があった。アブデラティフ・ケシシュ監督の他の長編は今まで日本で未公開の作品が多かったようで、これから入ってくる作品を見てみたい。撮影中は鬼のような監督だそうで、これは役者も大変だっただろうなと思った。しかし、だからこそのあの自然な演技に見えない演技は素晴らしかった。
 アブデラティフ・ケシシュ監督の他作品。
・ヴォルテールのせい(2000)
・身をかわして(2003)
・クスクス粒の秘密(2007)
・黒いヴィーナス(2010)

*1 二人のインタビュー

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