ツィゴイネルワイゼン

 



 ジプシーの如く各地をさすらう中砂(原田芳雄)は、旅の途中で親友であり士官学校独逸語教授の青地(藤田敏八)と共に不思議な妖艶さを放つ芸者小稲(大谷直子)と出会う。その後、中砂は名家の娘である園(大谷直子:二役)と結婚するが、彼が持ち込んだ悪性のスペイン風邪に園は倒れ、幼い一人娘を残して死んでしまう。中砂は何と小稲と再婚する。やがて、青地は妻の周子(大楠道代)が中砂と密会していたという疑念を抱くが、確信を得られないまま中砂はシンナー中毒で死んでしまう。小稲は死んだ中砂の物をすべて自分の周りに収めておきたいとの理由から、サラサーテ自身の声が入った「ツィゴイネルワイゼン」のレコードを借りていないかと青地を訪ねる。レコードを見つけた青地は中砂邸に赴くが、そこで彼が見たものとは……。



 初めて観た時から、この映画の独特の雰囲気に飲み込まれ、この映画の話が現実かどうかわからなくなる感覚がした。死の香りがした。中砂役の原田芳雄は相変わらずかっこいい。この時代の原田芳雄を見ると、「田園に死す」や「修羅雪姫 怨み恋歌」を思い出して、あぁいいなあと思う。
 「ツィゴイネルワイゼン」で印象に残っているシーンはたくさんある。腐る前の水蜜桃を舐めるシーンや、眼球を舐めるシーン、ちぎり蒟蒻、盲の三人組、サラサーテの盤……。
 自分が生きてると思い込んでいるのか、どうなのか。本当は自分は生きていないのか。誰が生きているのか。原作は、内田百閒の『サラサーテの盤』。サラサーテが自ら演奏するツィゴイネルワイゼンの曲に何か声が混ざっている、というレコードをめぐって後半話が進んでいく。
 風景や場所もとても印象的で、実際の場所に行ってみたいと思う。この記事を書いていて、またすごく見たくなっている。この夏の時期によく合う映画やと思う。









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ツィゴイネルワイゼン
Zigeunerweisen
1980年 日本
監督:鈴木清順

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