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仮面/ペルソナ

仮面/ペルソナ(PERSONA)
監督:イングマール・ベルイマン 1967年 スウェーデン

※ストーリーの結末に触れています。
何も知らずに見たい方はご注意ください。





すごいもん見た。むちゃくちゃよかった。
いや、ベルイマンの作品は本当大好きなんやけど、その中でも特によかった。

何がよかったかというと、ベルイマン作品にいつも共通して描かれることなんやけど、人間の本質を突いているところ。普遍的な人間そのものを描いているところが好きです。

仮面/ペルソナ(以下ペルソナ)は、女優で芝居の途中に突然言葉を話せなくなったエリザベート(リヴ・ウルマン)とエリザベートの世話をすることになった看護師のアルマ(ビビ・アンデショーン)の二人が主人公。二人は病院の院長の勧めで海辺の別荘で療養生活を送る。そこで、生活していくうちに、二人の人格は侵食しあっていき、人格がぼやけていくというか、新たな人格を得ていく…。
映画の冒頭、映画の内容とはあまり関係なさそうなサブリミナル映像が映る。セックスを暗喩しているもの、羊、磔、蜘蛛、子ども、画面に映る女...。この映像は後に描かれる描写との関係を匂わすものだった。

リヴ・ウルマン演じるエリザベートは女優で結婚もして子どももいて、世間からは理想の女性として見られていた。しかし、実際の彼女の内面は....
一方、看護師のアルマは活発でよく喋る。エリザベートと生活をしていくうちに、エリザベートが聞き上手(実際は喋ることができないので聞いている形になる)なのもあって、誰にも話したこともないような自分の嫌な過去の思い出なども話してしまう。

しかし、そのアルマが話した内容をエリザベートが医者に手紙で書いているところを知ってしまい、ケンカになる。

なんか言い合いになって、アルマがエリザベートを怒らせてしまい、海沿いの道を二人がダーっと歩いていくシーンが印象に残っている。

これ以降だんだんとアルマの人格がエリザベートに重なり、エリザベートの性格がアルマに重なるような感じになってくる。

物語の途中で、エリザベートの夫が訪ねてくるんやけど、そこでは、アルマがエリザベートとして対応するように見えるんやけど、あれはアルマの人格になったエリザベートやったのか?

最後のほうにアルマとエリザベートが向かい合って対話というかアルマが尋問するシーン、結構好きだった。
今までのエリザベートの仮面を剥がして、内面を吐露するアルマの人格と融合する瞬間バーン!(効果音)みたいな感じがショッキングだった。映画の撮り方も、カメラの位置を変えて撮った二つのシーンを縦にそのまま繋いでるみたいで、同じ言葉が繰り返されるので、最初はなんなんだこのシーン?と不思議な気持ちになる。
そして、その対話の最後にアルマも今まで憧れていた女優のエリザベートの内面を知り、女優も一人の人間だしダメな部分もあるということがわかる。アルマ自身も、今まで目指していた理想像とは決別し、自分の生き方を見つける。

新たな人格を得たエリザベートは回復し、女優に復帰する。

最後に冒頭の子どものシーンがまた映る。子どもは相変わらずぼやけたスクリーンに手を伸ばす。この子どもは、エリザベートの子どもで、テレビに映る母の顔に手を伸ばしていると私は解釈したのだが、やっぱりかわいそうなのは子どもだなと思った。
人間は誰しもが何らかの仮面(ペルソナ)をつけて生活しているけれど、その仮面をつけすぎて自分を演じすぎているとどうしてもしんどくなってくる。仮面を外したいけど、怖くて外せない。しかし、ずっと仮面をつけっぱなしにしていると本当の自分の顔がわからなくなってしまう…。
私自身は今現在になって、やっと自分の仮面だいぶ外れてきたなあと思う。昔はもっといっぱいつけてた。誰にも見せない仮面もあった。
でも、この作品を見ると、仮面というのは、悪い仮面ばかりではなく、良い面を吸収して新たな仮面を作り出すようにもとれた。
まあ何にせよ、自分にとって楽になる仮面をつけていたいし、作り出したい。

この映画は、『ファイト・クラブ』や『マルホランド・ドライブ』、『ホーリー・モーターズ』などなど他にも数々の映画に影響を与えた作品らしい。確かに、ペルソナを見ると、その影響の大きさをすごく感じた。

このペルソナを見てから、町山智浩さんの解説を聞いてみたんやけど、ベルイマン(既婚)がアルマ役の女優と付き合っていて、リヴ・ウルマンと出会い恋人をリヴ・ウルマンに乗り換えたって聞いて、おい!と思った。いや、リヴ・ウルマンとパートナー関係にあったのは知ってたけど、新旧恋人を共演(競演)させるか?!すご、と思った。

今作以降からリヴ・ウルマンはベルイマン作品に出続けるんやけど、リヴ・ウルマンとビビ・アンデショーンのこのときの気持ちが知りたい。

時間も82分とコンパクトな中にこれだけのいろいろな演出を詰め込んだ映画を描く映画。
すごく面白かったです。



ほなまた


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