『忘れられない日本人移民 ブラジルへ渡った記録映像作家の旅』 著者:岡村淳 (港の人,2013年) 私が岡村淳監督と出会ったのは、「ギアナ高地の伝言 橋本梧郎南米博物誌」の映画を見たことから始まります。東京に引っ越してきたばかりで、まだ部屋の片付けもままならないまま、でも何か映画を見に行きたい、と選んで日程の都合もよかったのがこの映画でした。 上映前に岡村監督からの挨拶があり、映画についての話を聞くことができました。映画を作った監督に実際にお目にかかるという経験がほとんどなかった私は、映画を作った監督の生の声が聞けたことが本当に嬉しく、映画自身も“生きた”作品に感じました。 岡村監督の映画を見て、ブラジルに渡った移民の話、また岡村監督自身も移民となりブラジルに渡り映像記録作家として、作品を撮り続けていらっしゃると知り、ギアナ高地の伝言の映画を見た後に、この『忘れられない日本人移民 ブラジルへ渡った記録映像作家の旅』の本をすぐに購入しました。 少しずつ読み進め、その読んでいる間にも岡村監督作品『アマゾンの読経』が上映されると知ると、横浜まで駆けつけるなど、もうすっかり岡村監督の描くドキュメンタリーの虜になっていました。 前置きが長くなりましたが、先日この本を読み終わったので、自分が思ったことや、考えたことなどをここに記録しておきたいと思います。 まず、ギアナ高地の映画を見終わったときに、「岡村監督はなぜ、ブラジルに渡った日本人移民に興味を持ったんだろう?」と疑問に思いました。その経緯が本書には書かれてありました。岡村監督がどのようにして、ひとりで全て(制作・構成・撮影・編集・報告)をこなす記録映像作家になったのか、それまでの歩みが記されていました。 岡村監督の映画を最初に見てから本を読んだので感じるのかもしれませんが、本を読んでいるのに、ドキュメンタリー映像を見ている感覚になりました。岡村監督の声で、文章は再生され、映像はないのですが、目の前に景色を想像しました。そして、本書の中に書かれている人々のドキュメンタリー作品も是非見てみたいと強く思いました。 本書は書籍の体をとっておりながら、7つの物語が入った1本のドキュメンタリー映画を見たようでした。それぞれの移民の方々の一つ一つのストーリーに岡村監督の情熱が込められていて、読んで...