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献灯使


多和田葉子 『献灯使』(2014年 講談社)

 初めてちゃんと多和田葉子の作品を読んだ。表紙を見て、これ上野動物園にいた珍しい鳥やん、と思い、帯の"デストピア文学の傑作!"という言葉に惹かれた。
 ストーリーは近未来の話。SFの映画はあまり好きじゃないんやけど、この話は大変面白く、ぐいぐい引っ張られるように読み終わってしまった。簡単に言うと、老人が死ねなくてずっと長生きしていて、逆に子供達はひ弱で、歩くのもだんだん歩けなくなるくらい運動もできなくて、若いうちにすぐに亡くなってしまう世界。日本は鎖国しており、外来語は使ってはいけない。主人公の義郎は自分の曾孫である無名を必死に育てている。自動車もインターネットも無くなった世界。子供の性別が生きている間に2、3回男性から女性、女性から男性に変わったりもする。そんな世界。

 この話は、一見パラレルワールドの体(てい)を成しているが、実際は今後の未来の日本そのものだと思った。少しは誇張している部分もあるかもしれないが、この世界のようになっていく虞は十分にあり得るし、だからこそ、多和田氏がこの話を書いたんではないだろうか。今の日本に住んでいる一国民として私は本当に不安である。日本にいることが嫌になるくらい不安である。日本がこのまま進んでいけば、明らかに戦争に巻き込まれるであろうし、国民がどんどん苦しめられていくことは目に見えている。早く国外へ行きたい。本当に行きたい。

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